尼崎の商店街から少し外れたところに、この店はある。
私がこの店を初めて訪れたのは中学生の頃だ。
確か、自宅にパン職人として住み込みしていた従業員に連れてきてもらった。
だから、開店してから優に50年以上は経っている。
当時、自宅を改装して「お好み焼き」屋を営業している店が近所にたくさんあった。
それらの店はすでにすべて無くなっている。
だが、この店はまだ生き残っている。
豚玉、牛玉、いか玉、モダン焼き、焼きそば…。
メニューも全く変わっていない。
目新しいメニューは無い。
その味も昔のままだ。
4人掛けの鉄板テーブルで、客自らが焼くシステムも変わっていない。
どこか懐かしい、昭和な雰囲気を漂わせている。
「福八」という店すら、古風な感じがする。
高校生の時、中間・期末試験が終わったら、ここでお好み焼きと焼きそばを食べるのが楽しみだった。
その頃店を切り盛りしていたおばさんは、今でもおばさんとして働いている。
当時のおばさんはまだ20代だったのだろうが、高校生の私にはおばさんだった。
今でも、時々尼崎商店街へ買い物に出かけるが、良くこの店でお好み焼きを食べる。
私が死ぬまで、この姿であり続けてほしい、場末のグルメだ。 |