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雀鬼5番勝負(8月凶日)

お盆で高校の友人F君が帰ってきた。
F君は大学を出てから大手冷機メーカーに就職した。
その後28年間、神奈川の藤沢工場で勤めている。
妻と子供に2人の4人家族で、2人の子供はもう就職している。
最近、50歳以上の希望退職が発表された。
つい1カ月前にその希望退職に応募することを決心したという。
「この先残っても、給料は減るし退職金も減っていく。それに段々居づらくなるしなあ」とF君。
子供も就職し奥さんもパートで働いているので、後はのんびりとフリーターでもしながら細々と暮らしていくと言う。
てっきり定年まで勤めるだろうと思っていたのだが、人生の転機はいつやって来るかわからないものだ。
お盆と正月は必ずF君、H君(女体アナリスト)、T君(不倫研究家)が集まって、雀卓を囲む。
その習慣も25年以上になるのだが、その間H君やT君も会社を変わったり離婚したりと様々な人生の変化を経験している。
一つの判断がその先の景色を変えていく。
麻雀も一つのツモや捨て牌で、天国に浮かぶこともあれば、一瞬にして奈落の底に落ちることもある。
その醍醐味が麻雀と人生の面白さなのかもしれない。



子のT君がリーチしてすぐに、こんな手牌になった。
この日はこれまで全くツキに恵まれず、ほとんど上がれない。
一局目はヤキトリ(一回も上がれない)に箱割れのドボン。手牌もツモも最悪だった。
とにかく上がれない。
テンパイして勝負に出ると振り込み、降りるとツモられるという始末。
この手牌ではのどちらかを捨てれば、七対子の聴牌になる。
親のT君に索子は通りそうにない。
は場に一枚出ていて、比較的安全な感じ。
勝負なら、
を切ってで待つ。 安全に行くなら、を切ってで待つ。
その日はこんな状態で何度も辛酸をなめていたので、安全な作を選んだ。
すると、すぐにH君が
をポロッと出すのだ。
「ううっ」と心の中で叫んだ。
を切ってで待っていたら、ハネ満である。
しばらくの間、悔やんだ。
そして、その局は流局になったのだが、その選択は正解だった。
T君は
待ちで、満貫なのだ。
僕はついさっきの後悔から一転して、大喜びした。
禍福はあざなえる縄のごとしである。

しかし、その後もツキに恵まれることもなく、−35と×が4つ。
奈落の底に落ちる結果となった。

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