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★ウランひとりぽっち
両親は震災の翌年までパン屋をしていた。
震災の後、私が家を建て替えた為一緒に住むようになった。
それまでパン屋の仕事をしていた両親だが、急に無職になり老後を送るようになったので、途端に有り余る時間を持て余した。
特にパン屋一筋で店を切り盛りしていた母親は一挙に老化した。
話すことが出来なくなり、足腰が極端に弱くなった。
母親は動物が好きだったし、以前は猫や犬を飼っていた。
そこで両親に少しでも心の張りを持たせようと、姉と私でをプレゼントすることになった。
我が家にウランがやって来た。

しかし、ウランは元気すぎて、母親がひとりで散歩させるのはむりだった。
父親が
常に散歩をさせたり、エサをやったりで、世話する役目を引き受けることになった。
時の経過とともに母親の老化はさらに激しくなり、歩くことはもちろん起きあがるのさえ、人の手を介さねばならなくなった。
父親がひとりで母親を面倒を見ていたが、介護疲れから突然「真佐子(姉)に面倒をみてもらう」と言って、岐阜へ行ってしまった。
姉の
家には成人した娘が商売を手伝って在宅しているし、何より介護するのに姉がそばに居るのが心強いらしい。
荷物をまとめて、両親は岐阜へ移った。
しかし、ウランは残された。
姉の家にはマロという犬がいる。
このマロがウランと極めて仲が悪いから、岐阜で住めないということらしい。
ウランは庭にひとりぽっちとなり、私が全面的に面倒を看ることになった。
しかし、ツライ。
毎朝毎晩の散歩である。
雨が降ろうが寒かろうが、遅く帰ろうが飲んで帰ろうが、ウランは散歩を待っている。
先日も心斎橋で飲んで遅くなったのだが、帰ると待ってましたというようにクンクンと啼くのだ。
私の同居人たちは全く散歩をさせる気がないようだし。
これからずっと、毎朝毎晩ウンコのお付き合いをしなくてはならない。
可愛いが、ぞっとする。

 

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