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雀鬼2番勝負(5月吉日)

木々の緑は初夏の太陽を受け,まばゆいほどに輝いていた。
雲一つない晴天である。
タバコの煙に包まれ、かび臭い麻雀台を囲んで1日過ごすには絶好の日和だ。
そんな麻雀日和に僕は梅田の雀荘にいた。
雀荘は3人麻雀が主の店で、僕たち以外はすべて3人打ちだった。
今日の対戦相手は高校の友人H君(1級女体鑑定士)、T君(むつスケ雀士)、それに印刷業者のIさん(麻雀界のロマン主義)である。
回りの3人麻雀は福沢諭吉が飛び交うようなギャンブルの世界だった。
それに比べると僕たちの麻雀は学生が時間をつぶしているようなお遊びである。
ただのお遊びとはいえ、時折笑いが止まらないという上がりに出くわすことがある。
それは全く期待出来ないような配牌が、思いも掛けないほどの大きな手になった時だ。
その局の僕はツキが下降線を描いて箱割れ寸前で、手持ち3千点しか残ってなかった。
最初2万5千点持ちで、無くなればその時点でゲームは終了、×(500円)が付くルールである。
そこで親が回ってきた。
親というのにうんざりするような配牌だった。
それが中盤すぎて、1図のような一向聴(イーシャンテン)になった。


が入れば、聴牌(テンパイ)になる。
親だから、聴牌すると即リーチといくつもりでいた。
しかし、ドラが(ここのルールはが全部ドラ)で、役が何もないリーチのみの手牌だった。
僕はため息をツキながら、女神に「ちょっと、何とかしてよ。ラーメンおごるから」と呟いた。
そうすると、いつもは言うことを聞いてくれない彼女がこの時ばかりは微笑んだ。
次ぎにドラのが来た。
僕はを落とした。
次ぎにまたが、また次ぎにが来て、図の聴牌になった。

何にもないクソ手がリーチで上がれば親満である。
僕は笑いをかみ殺して、すぐにリーチをする。
その笑いがふきこぼれそうになったのは裏ドラを見た瞬間だった。
そう、が裏ドラなのだ。
なんと、親のハネ満だ。
(ここのルールでははすべてドラ)をツモるものなら、親の倍萬になってしまう。
何巡後にH君がを振り込んで、1万8千点をゲットした。

その日は+22に○が2つの勝利であった。

麻雀が終わり居酒屋に飲んだ後、僕は女神との約束だったラーメンを食べて帰った。

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